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「大和言葉」とは?

大和言葉が使われる日本の風景

日本で使われる言葉には、外国から伝わった「漢語」と「外来語」、そして日本固有の「大和言葉」があります。
大和言葉とはやわらかい表現で繊細な情を伝える温もりのある言葉です。

この大和言葉が注目を集めるようになったのには、メールやSNSの普及が関係しています。
できるだけ簡潔に言葉を伝えることが求められるようになったことで自身の使う言葉が見直されるようになりました。

それによって、響きが美しくて短くても洗練されている大和言葉の存在にスポットが当たるようになります。
ストレートな表現ではないのに気持ちがきちんと伝わる大和言葉は、日本の誇るべき伝統です。

挨拶など日常で使える大和言葉

大和言葉でする挨拶

大和言葉は普段の何気ない場面でも使える言葉がたくさんあります。
自分の感情を表したり相手に気持ちを伝える大和言葉を10個ご紹介します。

①:心待ち

「心待ち」には「期待して心の中で待つ」という意味があります。
わくわくするような気持ちでその時を待っている様子がひしひしと伝わってくる大和言葉ですよね。

多くの場合、手紙の締めの言葉や別れ際の挨拶として「お会いできる日を心待ちにしております」という風に使います。
このフレーズは敬語なので目上の方に対して使いますが、文末を変えれば誰に対しても使うことができて、相手を温かい気持ちにしてくれますよ。

②:思いのほか

「思いのほか」には「予想していたことと違っている」という意味があります。
想定していた結果と事実が異なっていれば良い場合でも悪い場合でも使える万能な大和言葉です。

「今日は思いのほか寒かった」のように、どんな状況でも使いやすくなじみのある表現かもしれません。
見当違いというよりは自分の予想をはるかに上回る結果のときに使われます。

③:お平らに

「お平らに」には「正座を崩す」という意味があります。
和室で正座をする日本人ならではの表現であり、堅くならず楽にするように勧める大和言葉です。

客人に向けた挨拶として「どうぞお平らに」と使います。
こう声をかけておけば、客人も窮屈な思いをせず過ごせるでしょう。

④:ごゆるりと

「ごゆるりと」には「ゆったりする」という意味があります。
力を抜いて休む様子を示した丁寧な表現になっていて、響きもかわいい大和言葉です。

こちらも客人に対して「ごゆるりとおくつろぎください」と使います。
招かれている側は多少の居心地の悪さを感じるものですが、こう一声かけておけば心からくつろいでもらえますよ。

⑤:しばし

「しばし」には「少し」という意味があります。
時間を表す大和言葉で、「しばらく」と似ていますがそれほど長い時間ではないため、使い分ければニュアンスの違いを表現できます。

一般的な使い方としては「しばしお待ちください」という風に相手に向けた言い方が多いです。
そっけなさが緩和されて温もりが込められますよ。

⑥:この上なく

「この上なく」には「最高・最上」という意味があります。
これより上がないと思えるものの前後につけて感動の気持ちを伝える表現として、とてもやわらかいのにはっきり気持ちが伝わる大和言葉ですね。

「あの景色はこの上なく美しい」のように使えます。
見たものや体験したことに対するあふれるような思いがのるため、聞いた人は引き込まれるでしょう。

⑦:胸を打たれる

「胸を打たれる」には「強い感動」という意味があります。
大和言葉には胸を使ったフレーズが多いですが、どれも心を動かされる場合に用いられます。

映画や小説の感想を述べる際に「あのセリフには胸を打たれる」というように使ってみましょう。
心に良い衝撃を受けた気持ちが表れますよ。

⑧:心映え

「心映え」には「心構え」という意味があります。
つまり気持ちの有り様のことで、それが外に影響を及ぼすことを示す大和言葉です。

「彼女は心映えがいい人だ」と主に人を褒める場合に使われます。
内面の美しさは言動に表れるものなので、こう言われるような人になりたいですね。

⑨:奥ゆかしい

「奥ゆかしい」には「慎み深い」という意味があります。
特に女性を指して使うことの多い大和言葉で、上品で控えめな好感度の高い女性の態度が表れています。

「彼女の魅力はその奥ゆかしさにある」という風に、こちらもポジティブな意味で使われるものです。
その態度に引き寄せられてさらに深く知りたいとの気持ちが表れる言い回しですね。

⑩:あまつさえ

「あまつさえ」には「その上・おまけに」という意味があります。
同じ状況や似たような出来事が重なっていくことが表現されていて、主に悪いことが続く場合に使われる大和言葉です。

「タブレットを紛失したが、あまつさえスマホまで紛失した」のように使います。
悪いことは続く場合が多いですが、できれば身に招きたくはないものです。

ビジネスシーンで使える大和言葉

大和言葉を使うオフィス

大和言葉は相手を立てたり表現を和らげたりすることができるため、ビジネスシーンでもよく用いられます。
好印象を与えて良い関係を育む大和言葉を10個ご紹介します。

①:お知恵をお借りできませんか?

「お知恵をお借りできませんか?」には「良い考えや方法を教えてもらいたい」という意味があります。
経験のある上司にアドバイスをもらいたいときに使う大和言葉で、同僚や部下に対しては使われません。

自分だけでは仕事が進まないときに「部長のお知恵をお借りできませんか?」という風に使ってみましょう。
仕事が進むと同時に上司との関係も深めることができます。

②:お力添えをお願いいたします

「お力添えをお願いいたします」には「援助や協力がほしい」という意味があります。
上司や社外の方に対して協力を依頼する際に使える大和言葉です。

「プロジェクトの成功のためにお力添えをお願いいたします」などと使えるでしょう。
気軽な口調で使ってしまうと言葉の重みが薄れてしまい失礼になるので、改まった雰囲気で使うようにしてみてください。

③:お含みおきください

「お含みおきください」には「心に留めておいてほしい」という意味があります。
こちらの事情を理解して了解していてほしいことを伝える文面に記す文語の大和言葉です。

「出張のため不在になりますことをお含みおきください」というように、事情が変わってしまうことを伝えます。
大事なお得意様などさらに丁寧に伝えたい場合は、「お含みおきくださいますようお願い申し上げます」とすると印象が良いです。

④:お手すきの時に

「お手すきの時に」には「暇があれば」という意味があります。
してほしいことがある場合に相手に失礼のないように願いを伝えられる大和言葉です。

「お手すきのときにしていただけたら大変助かります」と使い、自分のお願いの重要度は高くないことを示します。
緊急でお願いしたい場合にこの言葉を使ってしまうと相手には伝わらないので注意してください。

⑤:不躾ではありますが

「不躾ではありますが」には「礼儀作法をわきまえておらず申し訳ない」という意味があります。
文字通りしつけがないということで、特に自分の言動が相手に影響を与えてしまうことを先に詫びておく大和言葉になります。

「不躾ではありますが、お名前を教えていただけませんか?」という風に目上の方へのお願いの言葉の前につけることが多いです。
くれぐれも相手から「不躾な人」などと言われないようにしましょう。

⑥:折り合い

「折り合」には「妥協する」という意味があります。
これは仕方なくその結論を出したというよりも、お互いが譲り合い納得して解決している様子が表現された大和言葉です。

「あの商談は大筋で折り合いをつけることができた」と双方に特になる結果になった場合に使います。
ビジネスでうまく仕事を進めていくに大切な点ですね。

⑦:いささか

「いささか」には「少しばかり」という意味があります。
様々なものの程度を示す大和言葉ですが、比較的堅い表現なので改まった文語的に用いられることが多いです。

「その点に関してはいささか疑問が残ります」のように使えます。
相手にとってはあまり良くないことを伝える場合でも、これなら強度を和らげられて聞き入れてもらいやすくなるでしょう。

⑧:荷が勝ちます

「荷が勝ちます」には「負担が重すぎる」という意味があります。
自分の力より荷物の重さの方が上ということで簡単に言えば「無理」と表現できますが、角が立てずに自分の気持ちを伝えて断ることができる大和言葉です。

大きな仕事を割り当てられた際に「その仕事はスケールが大きく私には荷が勝ちます」と断る使い方ができます。
仕事の重要性を理解した上で自分の身の丈では受けられないという謙虚さを表せますよ。

⑨:やむなく

「やむなく」には「どうしようもない」という意味があります。
都合があり目上の方の誘いや行事への参加を断らなくてはいけない場合に、謝罪の気持ちと残念に思う心情を表現できる大和言葉です。

「社内行事と日程が重なっているため、やむなく欠席いたします」という風に理由とともに使います。
このように断れば相手も嫌な気持ちにならずに済みますよ。

⑩:心ならずも

「心ならずも」には「自分の意思や希望に反している」という意味があります。
こちらも断りや謝罪の際に使う大和言葉で、その状況になったことが決して自分の本意ではないことを伝えられます。

「昨日はお約束の時間に心ならずも遅れましたこと、お詫び申し上げます」などと使えます。
ビジネスシーンでは状況が変わることも多いので、こういう大和言葉が自然に出るようにしたいですね。

お礼・感謝のありがとうという気持ちを表す大和言葉

大和言葉で伝える感謝

大きな感謝の気持ちを表したいとき、ただ「ありがとう」と言うのでは味気ない場合もありますよね。
そんなときに使いたい大和言葉を5個ご紹介します。

①:心より感謝しております

「心より感謝しております」には「嘘偽りなく感謝している」という意味があります。
目上の方に心の底から感謝の意を示したいことを改まった表現で示せる大和言葉です。

手紙など文面で感謝を伝えたいときに、「お力添えをいただき心より感謝しております」という風に使うと良いですね。
気持ちの深さを感じられる日本人らしい表現です。

②:お心づくし

「お心づくし」には「できる限りのことをする」という意味があります。
自分に対してしてくれた行動に心がこもっていることへの感謝が表現できます。

贈り物を受けたときに「お心づくしの品をいただきありがとうございます」というように使います。
こう述べることでその贈り物をとても気に入っている気持ちが伝わるので、相手も嬉しくなる大和言葉です。

③:お心にかけていただく

「心にかける」には「気に留める」という意味があります。
普段あまり顔を合わせる機会はなくても自分のことを気に留めてくれていて、思いやりのある対応をしてくれる人に対して感謝を示す大和言葉です。

「いつもお心にかけていただきありがとうございます」のように使います。
感謝の言葉の前に使うことで、より深い意味を持たせることができますよ。

④:お骨折りいただく

「骨折り」には「人のために力を尽くす」という意味があります。
自分のために時間や労苦を惜しまず使ってくれたことに対する感謝の気持ちが伝わる大和言葉です。

「この度はお骨折りいただきましてありがとうございます」と敬語で使います。
感謝だけでなく相手への敬意や労いの意味も含まれるため、またこの人のために何かしてあげたいという気持ちになりますね。

⑤:恐れ入ります

「恐れ入ります」には「ありがたい」という意味があります。
感謝の気持ちとともに恐縮している様が表現できるため、謙虚さを示せる大和言葉です。

「お褒めの言葉をいただき誠に恐れ入ります」というようにして、メールや手紙の文言として使うと印象が良いです。
このように言われると、目上の方との関係を良好に保つことができるでしょう。

恋や愛の思いを表す大和言葉

大和言葉で表す恋

恋する気持ちや愛情を表現する場合に大和言葉を使うと、とても風流で趣があります。
美しい気持ちを表せる大和言葉を5個ご紹介します。

①:慈しむ

「慈しむ」には「かわいがって大事にする」という意味があります。
大切にしたいという温かい愛情を表した大和言葉で、特に子供や動物に対して用いられることが多いでしょう。

「子猫を我が子のように慈しむ」と使うととてもかわいがっていることが伝わります。
この言葉だけでやさしい眼差しが見えるような表現です。

②:恋い慕う

「恋い慕う」には「強く心を惹かれて恋しく思う」という意味があります。
それぞれ分解して使うことができる単語が合わさることで、より深い心情を示せるのが大和言葉の良いところです。

「郷里の母を恋い慕う」という風に、使い方は恋愛だけに留まりません。
会いたいと思う相手にぜひ伝えたいですね。

③:心を寄せる

「心を寄せる」には「好意を持っている」という意味があります。
心の距離が近づくように相手に惹きつけられている気持ちを表現できる大和言葉です。

「彼に心を寄せるようになったのは随分前のことだ」と使うと、長く相手に片思いしている雰囲気が出ますね。
ただ、「関心がある・気遣う」という意味でも使えるので、無暗に使うと周囲を勘違いさせることもあるので注意が必要です。

④:思い初める

「思い初(そ)める」には「意識し始める」という意味があります。
以前から知っている人に対して恋愛感情を持つようになったときに使える大和言葉です。

相手に伝えるというよりは「幼なじみの彼を思い初める」のように自分の気持ちの表現として使われます。
じんわりと心が変化する様子が見て取れますね。

⑤:恋蛍

「恋蛍」には「恋焦がれる」という意味があります。
蛍が放つ光と想い人への強い思いを重ね合わせた風流な大和言葉です。

日常会話ではまず使うことはなく、歌詞や小説などの創作物で使うと深みのある表現になります。
想いの強さを表していながらも、どこか儚い雰囲気が感じられるのは大和言葉ならではですね。

大和言葉を使った名前一覧

大和言葉の名前がついた子供

伝統的で意味の深い大和言葉は、名前に用いられることも多いです。
名づけの参考にしたい大和言葉を使った名前を10個ご紹介します。

女の子

①さくら

日本を象徴する花であるさくらは女の子の名前としてよく用いられる大和言葉です。
語源は「咲き麗(さきうれ)」と言われていて美しく咲く様が表現されています。

花言葉は「精神の美・優雅な女性」なので、内面から美しく周囲に好かれる女性になってほしいとの願いが込められている場合が多いです。
名前を聞くと誰もが花の美しさをイメージできる素敵な名前ですね。

②こはる

こはると聞くと大抵「小春」という文字が浮かぶほど、日本人になじみ深い大和言葉です。
「晩秋から初冬の頃の暖かく穏やかな日和」という意味があります。

春を思わせる機構のことなので、心の晴れやかな素直でやさしい人になってほしいという願いが込められるでしょう。
違う漢字を当てても古風で暖かい雰囲気が感じられます。

③ちぐさ

ちぐさは夏生まれの女の子につけられることの多い大和言葉です。
「千草・千種」と書くことが多く「様々な植物」という意味があります。

可憐な雰囲気のある語感ですが、草花の持つ強さから困難にぶつかっても立ち向かえるようにという思いで名付けられます。
慎み深さがありながら芯はしっかりした女性に育ってくれそうです。

④ちとせ

ちとせは人名から商品名まで幅広く使われる大和言葉です。
主に「千歳」と書き「千年」という意味で長い年月のことを指します。

名前としては子どもに長生きしてほしいという願いが込められています。
伝統を重んじる日本らしい古風なイメージのある名前ですね。

⑤ほまれ

ほまれは「誉」という漢字が使われている大和言葉です。
「人が誉めたたえるほどの喜ばしい評価」という意味があります。

周囲から称賛を受けるような立派な人に育ってほしいとの親の願いが伝わります。
様々な場面で女性が活躍する時代になってきているため、このような思いも強まっているのかもしれません。

男の子

①あおい

あおいは「葵」という花のことを指す大和言葉です。
「太陽に向かって成長する植物」を意味する漢字に太陽にお辞儀をするような姿を示した「仰ぐ日(あおぐひ)」が変化した読みが当てられています。

タチアオイの花言葉には「大望」があり、徳川家の家紋に葵が用いられたことを踏まえて、威厳や品格のあるたくましい男性になってほしいという願いが込められます。
響きがやさしく女の子にも多い名前ですが、意味が分かると男の子にぴったりのかっこいい名前です。

②まこと

まことは「誠・真・信」といった漢字でよく使われる大和言葉ですが、最近は「慎人・真実」という漢字が当てられることも。
まことには「うそ偽りでないこと・まごころ」という意味があります。

飾らず誠実な人になってほしいという親の願いが表れた名前です。
表裏のない真っ直ぐな人というイメージで印象が良いですね。

③そら

そらはは子どもから大人までなじみ深い王道の大和言葉です。
「空・宙」という字が多く用いられ広大さの象徴として名づけられています。

空のように心の広い人になってほしいという願いが込められていることが多いですが、無限大の可能性を意味することもあります。
自然を表すかっこいい意味ながら響きがやさしいのが印象的な名前です。

④つばさ

つばさはそのまま「翼」と書いて名づけられるケースの多い人気の大和言葉です。
鳥にとってのつばさの役割から「助ける・守る」という意味があります。

鳥が翼を広げて空を飛び回る様子を連想して自由で活発な子になるよう願ったり、意味を結びつけて人の役に立てるようにという思いで名づけられています。
力強い雰囲気があるのですくすくと成長してくれそうです。

⑤ゆずる

ゆずるは名前で最近特に増えてきている大和言葉です。
「譲る」が正式なもので「自分のものを他の人に与える」という意味があります。

へりくだって自分よりも他の人を優先する慎ましい精神を持ってほしいという願いが感じられます。
しかし他の漢字が当てられている場合は漢字の方に深い意味があることが多く、同じ読みでも込められた意味は違うということがあるでしょう。

優美な大和言葉を使おう!

大和言葉が似合う春の風景

人が発する言葉にはその人の人柄が映し出されます。
大和言葉は日本人が本来持つ思いやり深さや礼儀正しい精神を思い出させてくれる魅力的な言葉です。

他の国の言葉にはない温もりと趣がある大和言葉。
後世に残していくためにも、積極的に使っていきましょう!

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ライター
noel編集部

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