刹那主義とは？刹那主義で生きる人の特徴＆快楽主義との違い

「刹那主義」とは？

意味

刹那は「せつな」と読む仏教用語です。
梵語の音写、サンスクリット（古代インドの言語）のkṣaṇa（クシャナ）を漢字で書き写したもので、意味は「きわめて短い時間」「瞬間」です。

「刹那主義」は、過去や将来のことを考えず、現在の瞬間を充実させて生きようとする考え方や態度です。

由来

「刹那」は仏教用語で、時間の最小単位です。
一弾指（指をひとはじきする間）に65刹那あるとされ、秒に換算すると1刹那が1/75秒です。

仏教では輪廻転生が説かれており、釈迦は弟子たちが自分の前世や来世の心配ばかりするのを憂いて「今この瞬間を大切に生きなさい」と諭しました。
「今」「ここ」を生きる思想の始まりです。

使い方

「刹那」は「瞬間」「一瞬」とほぼ同様の使い方をします。
「その刹那」という使い方が多く、芥川龍之介や夏目漱石、有島武郎などの文豪も小説に使用しています。

「刹那的」は「ほんの一瞬」「瞬間的」の意味で「刹那的な喜び」「刹那的な快感」のように使います。
「刹那主義」は思想なので「刹那主義の生き方」「あの人は刹那主義だ」と使用します。

刹那主義で生きる人の特徴

刹那主義で生きる人には、どのような特徴があるのでしょうか。
刹那主義で生きる人の特徴は、以下です。

1. 悩みがない
2. 部屋がきれい
3. 焦らない
4. 潔い
5. 勝負にこだわらない

特徴①：悩みがない

刹那主義は、過去に囚われず将来を無駄に心配せず、今この瞬間を大切に生きる思想です。
禅宗に「喫茶喫飯（きっさきっぱん）」という言葉があり、余計なことを考えずにお茶を飲むときはお茶を飲むことに集中して、ご飯を食べるときはご飯を食べることに集中しなさいという教えです。

「昔、食べられなくて辛い時期があった」「将来もちゃんと食べられるか」などと考えずに「今食べられる幸せ」だけを感じていれば、心が穏やかになり悩みがなくなります。

特徴②：部屋がきれい

刹那主義の人は、物を手放すことが上手です。
過去や未来に囚われなければ物に執着することもなく、持ち物もスッキリとしています。

何年も使っていない物、いつか使うかもしれない物（多分使わない物）を「今は必要ない」と英断できます。
断捨離をした人やミニマリストは「スペースも広くなり、物にもアクセスしやすくて快適」と、良い結果を出しています。

部屋はその人の心を表すので、刹那主義の人は心もスッキリしているのでしょう。

特徴③：焦らない

刹那主義の人は、焦らないのが特徴です。
焦るのは「早くしなくちゃ」という強い不安で、「早くしないと悪い未来（結果）を引き寄せてしまう」と妄想している状態です。

現在のことだけを見ている刹那主義の人には思いもよらないことです。
焦った出来事を後で思い返すと、焦る必要はありませんでしたよね。

むしろ焦ったことで、さらにミスが多くなったりしませんでしたか?
焦ることのない刹那主義の人、見習いたいですね。

特徴④：潔い

刹那主義の人は、ものごとに固執しないので潔いのが特徴です。
自分で築いた環境も地位もあっさり手放して、どんな逆境でも受け入れて悠々と生きています。

会社を辞めたいけれど辞めるのが怖い、もう好きではない恋人と別れられないなどの執着を潔く手放します。
もしも失敗だったとしても、また一から始めれば良いと考えます。

特徴⑤：勝負にこだわらない

刹那主義の人は、勝負にこだわりません。
そもそも人と比べることや人の評価に興味がありません。

人の価値観はそれぞれ異なり、自分とは違う意見の人に出会うと批判したくなる人がたくさんいます。
他人の価値観に振り回されず、無駄をそぎ落としてシンプルに生きる姿勢は見習いたいですね。

刹那主義はプロのアスリートにも多く、勝負よりも自分が納得する結果を出すために、日々集中して努力を積み重ねています。

刹那主義のメリット

刹那主義にはどんなメリットがあるのでしょうか?
刹那主義のメリットをご紹介します。

1. 集中力が身に着く
2. 動じない自分の確立
3. 目標を達成しやすい

メリット①：集中力が身に着く

仏教では「三世に生きる」という教えがあります。
三世とは「過去」「現在」「未来」のことで、人は現在を生きているとき過去はすでに死んでいて、その現在もすぐに過去となり未来に生まれ、それが現在となります。

死んだ過去のことを思い返してもどうしようもなく、まだ生まれていない未来のことを想像しても仕方ない、今をどう生きるかしかないのです。
常に今目の前のことに集中することを繰り返していると、集中力は格段にアップします。

メリット②：動じない自分の確立

刹那主義の人も人間なので、驚いたり怒ったり落ち込んだりすることはあります。
ただその感情も「刹那」（一瞬）のことで、すぐに「（過去のことは）ま、いいか」となります。

怒りや悲しみを無理に抑え込もうとすると、余計に囚われてしまうことがあります。
感情は湧き上がってくるものなので、無理に抑える必要はありません。

刹那主義は感情に逆らうことなく自然に抜け出すので、傍から見ると「動じない人」に映ります。

メリット③：目標を達成しやすい

「刹那」は最小単位だと先述しましたが、これに対して最大単位は「永劫（えいごう）」です。
「刹那」が積み重なって永劫になる、つまり現在の瞬間を大切にし続けると素晴らしい人生が出来上がります。

この方法で長期的な目標を見据えつつ、今できることに取り組むのがコーチングです。
1990年頃からアメリカで広まった運動や勉強、技術の指導スキルで、まさに刹那主義の手法です。

コツコツと刹那を充実させて、目標を達成します。

刹那主義のデメリット

今を大切に生きる刹那主義に、デメリットはあるのでしょうか?
刹那主義のデメリットは、以下です。

1. 妄想も結構楽しい
2. 手放しすぎるのはもったいない
3. 自尊心が高すぎるのも問題

デメリット①：妄想も結構楽しい

過去や将来など余計なことを考えない刹那主義は、シンプルで悩みも少ないのですが、余計なことも人生の彩りだったりします。
マイナス思考やネガティブ感情は、ハングリー精神となって多くの作品を生み出してきました。

不安のもとになる「妄想」も、小説や映画などの作品となってたくさんの人を楽しませてくれます。
シンプルな考え方にも憧れますが、モヤモヤと悩んだりイジイジと落ち込んだりすることも、人間っぽくて愛しいものです。

デメリット②：手放しすぎるのはもったいない

手放すことが上手な刹那主義ですが、捨てる行為には「やっぱりもったいない」気持ちは否めません。
リサイクルショップで引き取ってもらえる物は限られていて、友人に押しつけるわけにもいかず、捨てることが圧倒的に多くなりますから。

またミニマリストの中には、保つことにプレッシャーを感じて苦しくなる人もいます。
何事もほどほどにしておきたいですね。

デメリット③：自尊心が高すぎるのも問題

余計なこと（他人のこと）を考えないからか、自分を大切にしている人が多い刹那主義者には、自尊心がとても高い人がいます。
自尊心が高いのは良いことですが、高すぎる人はどうなのでしょう。

「自分はすごい」「自分だけが正しい」と自慢げに言う人は、自分に満足しているので向上心がありません。
人にも嫌われがちですが、そんな「余計なこと」は刹那主義の人は気にしませんよね。

刹那主義で生きるのは悪いこと？

刹那主義で生きるのは悪いことではなく、むしろ素晴らしいことです。
理想を持って今を大切に生きる、目の前のことに集中して思い切り楽しむ、そんな毎日を積み重ねたら、最高の人生になるはずです。

人はどうしてもぼんやりと何かを考えてしまいます。
煩悩や雑念を捨てて「今」に集中すると言えば、マインドフルネス瞑想ですね。

マインドフルネスは、刹那主義の中枢をトレーニングとして実践するプログラムです。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツといった世界の成功者や、一流企業が重要視しています。

「刹那主義」と「快楽主義」の違い

快楽主義とは?

快楽主義は「快楽を感じることが正しい、心地良いと思う行動をすることが正しい」とする考え方です。
例えば朝寝坊を心地よいと思う人は、朝寝坊をするのが正しいのです。（哲学上は）

実際には「遅刻すると居心地悪すぎ」「仕事がクビになった」と、結果的に不快になることも多々あります。
またギターが好きなのに、快楽を目指して演奏するうちに楽しめなくなることもあります。

主義や思想は哲学なので、いざ実践するとジレンマやパラドックスはつきものです。

刹那主義との違い

刹那主義を「後でどうなっても、今さえ良ければいい」と解釈する人がいますが、これは半分だけ正解です。
刹那主義は「今を大切に生きる」のが原則で、自暴自棄な気持ちは含まれていません。

快楽主義は先述の通り「快楽と感じる行動=善」とする思想なので、まったく違いますね。
では「後でどうなっても誰に迷惑をかけても（例え犯罪でも）自分がしたいことをする」のは何の主義でしょうか?

答えは「ただの現実逃避」です。

今を大切にする刹那主義、今日するべきことは今日する!

「秒で生きる」とも言われる刹那主義は、理想を思い描き、そこに向かって今（刹那）を大切に充実させる生き方です。
「先のことは知ったことではない」のではなく、未来（予想）に振り回されないのです。

足元を疎かにすることなく、今日するべきことは今日するのです。
目の前にある仕事に集中することで、軽やかに素晴らしい人生を送ることが出来ます。