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高知の方言(土佐弁)の特徴・種類

山梨の方言(甲州弁)でのおしゃべり

高知の方言(土佐弁)の特徴

ドラマや映画でよく耳にする土佐弁ですが、正式にはどんな種類があって、どういった特徴を持っているのでしょうか?

まずは、土佐弁の代表的な3つの特徴を見てみましょう。

  1. 現在完了形の表現方法が存在する
  2. 母音をはっきりと発音する
  3. 「し」が「い」に変化する

特徴①現在完了形の表現方法が存在する

一般的に、 「過去」「現在」「未来」の3種類しか日本語の動詞の活用はないと言われています。
しかし、高知の方言である土佐弁には日本で唯一「現在完了形」が存在するのです。

例文を使って説明しましょう。
「雨が降っている」を土佐弁で言うと「雨が降りゆう」となります。

これは「現在」を示しています。
そして「雨が降っていた」は「雨が降っちょった」となり、「過去」を表します。

ところが土佐弁にはもう一つ「雨が降っちゅう」という表現があるのです。
これは「さっきまでは雨が降っていたけど、今は止んでいる。」という意味の現在完了形です。

標準語の動詞でこの活用にあたるものはありません。
土佐弁独特のものです。

ただし、注意したいのは「ドアが閉まっちゅう」と言った場合は「ドアが閉まっている」という現在形になります。
「閉まる」という自動詞は現在形で「閉める」という他動詞になると「閉めちゅう」と過去完了形になります。

この場合は「さっきまで空いていたドアが、今は閉まっている」という意味になります。

特徴②母音をはっきりと発音する

標準語では伸ばす音で表現される母音が、土佐弁では一音としてしっかり発音されます。
例えば、「時計」の標準語を文字表記すると「とけー」となりますが、土佐弁では「とけい」と「い」をはっきり発音します。

特徴③「し」が「い」に変化する

標準語で「し」と発音される音が、土佐弁では「い」になる場合が多いです。
例えば「どうしたの」が「どういたの」となったり、「また明日」が「またあいた」と変化したりします。

この「い」に発音が変化する現象をイ音便と言います。
古文で出てきた「書きて」を現代語訳して「書いて」となる現象と同じものです。

ただし、古文のイ音便は動詞の活用の変化ですが、土佐弁は活用は関係ないのであしからず…。

高知の方言(土佐弁)の種類

高知県の方言は、「幡多弁」と「土佐弁」の二つに大別されます。
幡多弁(はたべん)とは、主に西部の幡多地域で使われている高知県の方言です。

土佐弁のでは語尾が「き」となるのに対して、幡多弁では語尾に「けん」を使うという事が大きな違いの一つです。
例えば、「今日は寒いから、コートを着て行ってね」を幡多弁では「今日は寒いけん、コート着て行ったや」と言います。

これを土佐弁にすると「今日は寒いき、コート着て行きや」となります。
他にも「知ってるの?」と尋ねる時は、幡多弁では「知っちょう?」となり、土佐弁では『知っちゅう?」となるといった違いが見られます。

本記事で取り上げている土佐弁は高知県の東部・中部で使われている高知の方言の一つです。

高知の方言(土佐弁)のよく使われる定番表現

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①:こじゃんと

「こじゃんと」の語源は、姿勢を正すという意味の「しゃんとする」です。
これに「こ(小)」を付けて「こしゃんと」という言葉が生まれました。

「こしゃんと」は「良い具合にまとまっている様子」や「完全に」という意味を持つ高知の方言として広く使われるようになりました。
そこから「こじゃんと」に変化して、現代では「きっちり」「見事に」「完全に」という意味で使われています。

お酒が大好きな高知の人が集まって「今日はこじゃんとやるぞ」というと、徹底的に飲むぞという酒盛りの合言葉として使われています。

②:~ちゃ

高知の方言では語尾に強調を意味する「~ちゃ」を付けます。
例えば、驚いた時には「びっくりしたちゃ」というような使い方をします。

他には、何か嫌なことをされそうになった時に「しなちや」=「しないでよ」といって他人の行動を、制止するような使い方をする場合もあります。
この「~ちや」は「~と言や」が変形したもので、「~と言ってるじゃないか」と念を押して、強調するときに使われるものです。

つまり標準語で言うと「しないでって言ってるじゃないの」というニュアンスになります。

③:いごっそう

高知の男性の気質、性格を表した土佐弁です。
「いごっそう」には様々な意味が含まれていて、漢字で書くと「異骨相」となります。

「頑固」「強情」「融通が利かない」「自分が、こうと決めたら周りの事はお構いなしに突き進む」というような性格を指しています。
ただし、ネガティブな意味だけではなく「男気があって真っ直ぐ」というような気質を指す言葉でもあるので、使い方には注意が必要です。

④:~が、~がぁ

高知の方言では、格助詞の「の」が「が」に置き換えられます。
例えば「どこに行くの?」という質問は「どこに行くが?」になります。

標準語で「の」と「が」が続くような言葉の時は、「が」に置き換えて「がが」と連続するのではなく、「がぁ」と伸ばすように変形します。
「薬を飲むのがつらいです」というような時は「薬をのむがぁつらい」となります。

また、「このカメラは私のものです」と物の所有を示す時にも「が」が使われます。
「このカメラ私のがやき」という使い方をします。

⑤:せられん

「せられん」と聞くと、近畿方言圏の人は「できない」という意味だととらえて、北日本や東日本方言圏に属する人には「することを願っている」という意味だと、とらえられてしまう言葉でしょう。
ですが、これは「してはいけない」という禁止を表す高知の方言です。

このとらえ方の違いは地域差が大きく、「こちらに書かれん」と言われたら、ある人は「ここには書けない」と解釈し、またある人は「こちらに書いてください」と解釈してしまう、という事です。
ところが土佐弁における正解は「こちらに書いてはいけません」という禁止なのです。

他にも「行かれん」「来られん」というように、動詞について活用される言葉なので判断が難しいですが「未然形動詞+れん」が基本形なので覚えておきましょう。
ここまで意味が変わってしまう、この方言は要注意です。
土佐弁では、非常に頻繁に使われる言葉のひとつです。

⑥:つんでいく

「つんでいく」とは荷物の事ではなく、人間を車に「乗せていく」という意味で使われる高知の方言です。
「つんでっちゃおか?」=「車に乗せて行ってあげようか?」というように使います。

乗せてもらった側は「つんできてもろうた」というのです。
「積む」と言われると、人間を荷物のような言い方して、失礼…と思ってしまいますが土佐弁ネイティブの方には違和感のない表現なのです。

送り迎えを頼む際などに、日常的に大変よく使われている方言です。

⑦:てんご

「てんご」は標準語では「冗談」という意味です。
「またあんたてんご言ってるなぁ」=「またあなたは冗談を言っているんですね」というように実際は使われています。

実際は「てんごう」という言い方も使われていますが、意味はおなじです。

⑧:ちっくと

ドラマの影響で、全国的にも普及した有名方言の一つです。
「ちっくと」は標準語で「ちょっと」という意味にあたります。

「ちっくと」と「ちくと」どちらも使われていますが、意味に違いはありません。
「仕事終わったらちっくと寄って行かんかよ?」=「仕事が終わったら、少し寄って行きませんか?」といった風に使われいます。

⑨:~く

「~く」は、「~の家」という意味で使われている高知の方言です。
「今から友達く行ってくるね」=「今から友達の家に行ってくるね」というように使用されています。

この方言は、高知の人にとって日常的な言葉で、方言であると知らずに使っている人が多いのも特徴です。

⑩:くるめる

くるめるは標準語では「包める」と書き、「ひとまとめにする」といった意味や「言葉巧みにごまかす」という意味を持っています。
ところが、これが高知の方言になると「しまい込む」という意味に変化するのです。

「財布は引き出しにしまっておかないといけませんよ」=「財布は引き出しへ来瞳著冠といかんぞね」というような使い方をします。
こういったしまい込むという意味とは別に、もう一つの意味があります。

それは「治めている」「管理する」という意味です。
「奥さんは、ようくるめてやりゆう」=「奥さんは上手に管理している」というような使い方もあります。

標準語とつながる意味の使われ方ではありますが、「言いくるめる」にみられる「巧みにだます」といった使い方は土佐弁にはありません。

⑪:えい

これは二つの意味をもつ土佐弁です。
「え」にアクセントがある場合は「いいね」で、「い」にアクセントがある場合は「いらない」です。

繰り返して使われることが多く「いね、いね」は「すごくいいねー」という意味で、「えね、えね」は「気にしないでー」と意訳されます。

⑫:~ないがやないが?

「~ないがやないが?」は標準語で「~ないんじゃない?」にあたる高知の方言です。
例えば「明日は雨降らないんじゃない?」=「明日は雨降らんのやないがやないが?」というような感じで使います。

「これあなたのじゃない?」=「これあんたのやないがやないが?」とまるで早口言葉の様ですが、高知の人の間では日常的に使う頻度の高い土佐弁です。

高知の方言(土佐弁)の告白フレーズ・かわいい表現

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①:なんちゃじゃない

これは「たいしたことないよ」「どうってことないよ」という意味を持つ、高知の方言です。
例えば、女の子が、何か辛い事を我慢していて「なんちゃじゃないよ」と強がっているところを想像すると、キュンとしますね。

意地を張っているような印象を受けるこの言葉は、気が強いと言われがちな高知の女性の気質に、非常にマッチした表現です。
また、何か手助けをした時のお礼に対して「どういたしまして」という意味でも使われることがあるので、割と頻繁に聞くことができる、可愛い土佐弁の一つです。

②:こじゃんと好きやき

告白のセリフは、はっきりストレートなものが一番胸に刺さりますよね。
土佐弁の告白フレーズは、全国的にも人気があると言われています。

「あんたのこと、こじゃんと好きやきね」=「あなたのことがめちゃくちゃ好きです」という意味の土佐弁です。
強い意志を持つように感じる、高知の方言は告白のフレーズで聞くとより一層魅力的に感じますね。

「好きやき」というフレーズは「すき焼きが好きやき」というようなダジャレで面白くいじられますが、告白の言葉ではおふざけの雰囲気は全くない可愛い土佐弁です。

③:わりことし

言葉の響きが可愛らしい、高知の方言です。
「わりことし」は標準語では「悪い子」や「いたずらっ子」という意味です。

彼女とケンカした時に「またこげなことしてから~、このわりことし!」=またこんなことして~、悪い子だなぁ」という感じで叱られたら、素直にごめんなさいと言えそうですよね。

④:ほななー

これは一般的に圃場によく使われる高知の方言で「ばいばい」というお別れの挨拶です。
近畿圏方言にも同じ言い回しが存在します。

標準語でいうところの「それじゃあね」に当たる言葉ですが、土佐弁で言われるとグッと親近感が増しますね。
「私電車やきー、ほななー」=「私電車だから、じゃあねー」という感じで使われています。

⑤:ほにほに

昔の土佐弁で現代ではあまり使われなくなった表現ですが、その音の響きの可愛さで、今回取り上げました。
「ほにほに」は「ほんに、ほんに」が短縮されたもので「うんうん」や「なるほど」という相槌に使われる高知の方言です。

「本当に、本当に」というのが標準語にしたときに言い方ですが、随分堅苦しくなって、相槌には向きませんね。
方言が持つ、独特の柔らかさや親しみのあるニュアンスが、この「ほにほに」に凝縮されています。

高知の方言(土佐弁)の面白い表現

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①:ちゃがまる

「茶が丸」「茶釜る」?聞き覚えの無い、フレーズですよね。
実は、これは「壊れた」という意味の高知の方言です。

物に対しても、人に対しても使われる表現です。
例えば、物に対しては「この時計がちゃがまりゆう」=「この時計が今にも壊れそうです」というような使い方をします。

ちゃがまる→壊れる。
ちゃがまりゆう→今にも壊れそう。

ちゃがまった→壊れてしまった。
と動詞として、時制の活用もある方言です。

人に対して使う時は「壊れた」という意味ではなく疲れ切って動けなくなった状態を示す方言として使われます。
「ちゃがまるき、やめちょきや」=「疲れるから、もうやめた方がいいよ」というような使い方をします。

②:かまえる

「構える」と書く標準語とは違った意味で使われている高知の方言です。
これは「組み立ててつくる」「前もって準備する」「策略をたくらむ」といった様々な意味を持つ土佐弁なのです。

最もよく使われる用法は「準備する」の意味です。
どこかに出かける時に「早よかまえんと間に合わんぜよ」=「早く準備しないと間に合わないですよ」というような使い方をします。

またお客様がいらした際に「かまえましたきに、上がっていってください」=「酒席の準備をしましたので、召し上がっていってください」という使い方もあります。

高知はお酒の消費量が日本一になったこともある酒豪ぞろいの県民としても知られます。
この「かまえる」が食事の支度ではなく酒席の準備というニュアンスを持つのもお国柄と言えるでしょう。

③:こみこむ

「こみこむ」はその音の響きの面白さに対して、とても固いイメージに使われる高知の方言です。
「こみこんで、仕事をしゆうきに」=「真剣に取り組んで、仕事をしているから」というように、「物事に真剣に打ち込む」や「心を込める」というようなことをいう時に使われる土佐弁です。

語源は、心を込めるの「込む」が変形した形だと言う説と、もう一つ別の使い方がある事から、違った説が唱えられています。
それは「こみこんだ話し」=「複雑な話」や、「こみこんだ道」=「入り組んだ道」にみられるような使い方です。

これは「複雑で入り組んだ様子」を示していて、「ある場所に物がいっぱい詰まって混雑している」の「混雑」から「混み、混む」になったという、二通りの説が語源として伝えられています。

④:こーべる

「おしゃれをする」「きちんとした格好をする」という意味の高知の方言です。
「そんなにこじゃんとこうべって、どこ行くが?」=「そんなにきっちりとおしゃれして、どこに行くんですか?」といった使い方をします。

実際に、お化粧をしたり、着飾ったりすることを指す言葉ですが、土佐弁でよく使われる場面は「あん人はこうべりじゃ」というような時なのです。
ここでいう「こうべり」はおしゃれな人だという意味ではなく、上品ぶった態度や話し方をして、自らを飾る人のことを指しています。

つまり、土佐弁の「こうべり」は外見だけでなく、中身もよく見せようと飾り立てる人のことを言うのです。

⑤:のうがわるい

「脳が悪い」なんだかひどい言葉ですね。
突然、高知の人に言われたら、悪口を言われているような気がしますがそれは間違いです。

土佐弁の「のうがわるい」は「性能がわるい→具合が良くない」という意味で使われる方言なのです。
「そのパソコンのうがわりいろ」=「そのパソコンは性能が良くないですね」という使い方をします。

逆に、性能が良い事を「のうがいい、のうがえい」と言います。

高知の方言(土佐弁)を話す芸能人やドラマ・映画

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高知出身の有名人と言って、真っ先に名前が挙がるのは坂本龍馬でしょう。
2010年に放送されたNHKの大河ドラマ 「龍馬伝」や、2009年に放送され、その人気から2011年に続編が放送されたドラマ「JIN ‐仁‐」。

これらのドラマに登場する、坂本竜馬の話す土佐弁が、世間一般の人々に高知の方言=坂本龍馬の言葉、というイメージを根強くさせました。
現代で、高知の方言を話す有名人と言えば「広末涼子さん」が有名です。

普段は標準語を話している彼女ですが、高知県をPRする動画サイト内で見事な土佐弁を披露しています。

まっことええよね土佐弁

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全国の方言の中でも、ドラマ等で使われることが多く、親しみのある土佐弁。
坂本龍馬のイメージの影響で、男性的な印象が強い土佐弁ですが、詳しく見直してみると女性が使って可愛らしい方言であることが分かりました。

リアルな土佐弁を味わう為に、高知に出かけてみてはいかがでしょうか。

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ライター
noel編集部

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