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事実婚とは…わかりやすく言うと? 

事実婚とは納得済みの夫婦

事実婚とは、夫婦関係にありながら、婚姻届を提出していないために「法律の上では夫婦とは認められていない」という関係のことです。
ここで言う夫婦関係とは、一緒に住んでいること、社会的な協力を伴っていること、貞操義務があることなどです。

また、事実婚の相手とは「法律が認める配偶者」ではありません。
したがって、事実婚の状態だと税金などの面では不利になってしまうこともあります。

しかし、事実婚のカップルでも婚姻の届け出をした夫婦と同じように、住宅ローンをカップルで組むことができたり、生命保険の受取人になれるものもあります。

事実婚と届け出婚との違い 

事実婚とは永遠の愛

事実婚と届け出婚の違いとは、夫婦だけど婚姻届を出していないというのがざっくりした違いですが、それだけでは何がどのように違うのかよくわかりません。
事実婚と届け出婚との違いには、具体的には以下のものがあります。

  1. 公的な手続きをしているかどうか
  2. 戸籍が別々
  3. 子供が生まれたとき
  4. 事実婚のパートナーは相続できない

以上4つの事実婚と届け出婚との違いとは何か、くわしく見ていきましょう。

違い①:公的な手続きをしているかどうか

事実婚と届け出婚のもっとも大きな違いとは、婚姻届を提出したかどうかとういうことです。
法律上の結婚=婚姻とは、婚姻届を提出して受理されて男女が同じ戸籍に入ります。

手続きとしては市区町村の役所に婚姻届という紙一枚を提出するだけなのですが、その紙一枚を提出するかしないかが、二人の関係を大きく左右するものなのです。

違い②:戸籍が別々

①であったように婚姻届を出していないと、当然のことながら戸籍は別々です
届け出婚の場合は、婚姻する男女がそれぞれの親の戸籍から離れ、どちらかが姓を変えて男女で同じ一つの戸籍に入ることになります。

しかし事実婚の場合はその必要がなく、戸籍はバラバラでも構いません。

違い③:子供が生まれたとき

事実婚のカップルに子供が生まれたら、子供は自動的に母親の戸籍に入り、親権も母親が持ち、母親の姓を名乗ることになります。
その子供は婚姻関係にない男女の子=非嫡出子となり、父との間に法律的な親子関係にするには父となる人の認知が必要になります

違い④:事実婚のパートナーは相続できない

働き方や考え方で事実婚だからといって不利益が生じることはないと思っていて現時点では問題なくても、後々になってからどうにもできないことがあります。
それはパートナーが亡くなったときの相続です。

事実婚の関係だと、パートナーが自動的に財産を相続する権利がありません。
遺言を残すことによってパートナーに相続させることも可能ですが、基本的には財産を相続することができないのです。

事実婚と同棲の違い 

事実婚と届け出婚とはあまり変わらない

それでは、事実婚と同棲とは何が違うのでしょうか。

事実婚も同棲も一緒に住んでいるなど共通点は多いですが、そのもっとも大きな違いとは、夫婦関係の認識があるかどうかということです。
一緒に住むだけでなく、社会的・経済的に協力したり、不貞行為をしてはいけないということになります。

同棲でも家賃生活費を出し合ったりしますし、浮気はいけないことですが、それはカップルごとに考え方が違ったり、その考え方を否定する権利は他人にはないものです。

そして、同棲とは今一緒にいたくて同居しているただの恋人で、あまり社会的に認められた夫婦関係とは言えないのです。

事実婚のメリット 

事実婚とはわかっている

現代の日本では届け出婚をする人が大半の中、あえて事実婚をするのは得られるメリットがあるということです。
事実婚には以下のようなメリットがあると言えます。

  1. 姓を変えなくていい
  2. 夫婦関係を解消されても(別れても)戸籍に記載されない
  3. 離婚してすでに子供がいる場合など、再婚は大変だから
  4. 一定の収入がある仕事の場合、何かと都合がいい

以上4つの事実婚のメリットとは何か、くわしく見ていきましょう。

メリット①:姓を変えなくていい

事実婚を選択するカップルは、この「姓を変えなくていい」という理由の人がたくさんいます。
それまで生きてきた姓を変えたくない人、姓を変えるとパートナーの家に入ったという感じになって抵抗があるという人、姓の変更の各種手続きが面倒だという人など、姓を変えることで出てくる様々な問題を考えずにすむことになるからです。

メリット②:夫婦関係を解消しても(別れても)戸籍に記載されない

届け出婚をした夫婦が離婚すると、戸籍にはその旨が記載されてしまいます。
事実婚なら二人が別れて夫婦関係を解消しても、そのことが戸籍に残ることはありません

いわゆる「バツ1」のようにカウントされずにすむのです。

メリット③:離婚してすでに子供がいる場合など、再婚は大変だから

シングルで子供がいる人の場合、もし籍を入れるとなるとその連れ子のことでいろいろ複雑な問題があります

例えばシングルの母親が子供を育てていた場合、籍をいれて夫側の姓になると、子供も夫の姓に変わることなどです。
再婚となると法的な手続きや他人が子供の心配をしてくるなどの余計な雑音が入ってくるなど面倒なこともあります。

メリット④:一定の収入がある仕事の場合、何かと都合がいい

法律婚のメリットとして、税金の配偶者控除や扶養控除がありますが、その場合は年収に制限があります。
また、年間130万円以上の所得があると社会保険扶養者からも外れるので、一定の収入がある仕事をしていれば税金面でのメリットはなくなります

また、一定の収入がある仕事は任される仕事が大きく、自分のポジションや取引先との関係でも、結婚して姓が変わると不都合なことがあります。
さまざまな手続きのわずらわしさや姓が変わることのデメリットのほうが大きいので、あえて届け出婚をする必要がないということなのです。

事実婚のデメリット 

事実婚とは結婚と同じ

事実婚にはメリットだけではなくもちろんデメリットもあります。
続いては、事実婚のデメリットについて解説していきます。

  1. 婚姻関係の意思確認が証明できない
  2. パートナーは法定相続人にはならない
  3. 子供の問題
  4. 公的な制度の対象にならない
  5. 世間から理解されない 6.日常生活の細かいことで不便に感じる

以上6つの事実婚のデメリットとは何か、くわしく見ていきましょう。

デメリット①:婚姻関係の意思確認が証明できない

いくら一緒に住んでいる事実があり、社会的に協力しているとしても、それだけで二人が婚姻関係にあるということを他人にきちんと証明することはできません
どちらかが不貞行為をしてしまっても、「婚姻関係になかった」と言い張って逃げることもできてしまうわけです。

デメリット②:パートナーは法定相続人にはならない

事実婚と届け出婚との違いのところでも出ましたが、婚姻届を提出していないカップルは、どちらかが亡くなった時に自動的に法定相続人として財産を受け取ることはできなくなります
生前に遺言できちんと残し、しかるべき措置をしておいて初めて相続することも可能になりますが、手続きが必要だったり、条件があったり、遺言通り全額受け取ることができるとは限りません。

デメリット③:子供の問題

事実婚のカップルの間に子供が生まれた場合は母親の戸籍に入って母親の姓を名乗ることはご説明しました。
これは戸籍上の問題だけではなく、子供が大きくなったときに父親と姓が違うことを子供自身がどう考えるか、周りから何か言われたりすることもあります。

また、子供が「婚姻届を出していない=結婚はしていない」ということを知ったとき、親や自分の存在をどう感じるかなども難しい問題です。

デメリット④:公的な制度の対象にならない

税金の配偶者控除などが当てはまらなくなったり、もし財産を相続したとしても相続税の配偶者控除を受けられなくなったりします。
公的な制度以外でも、病院で入院や手術の承諾書にサインできなかったり、生命保険に加入している場合の生命保険料控除は本人のみで、パートナーは控除の対象にならないなど、何かと制度の対象になれないこともあります。

デメリット⑤:世間から理解されない

外国ではむしろ事実婚のほうが多いという国もあるくらいですが、まだまだ日本では社会的に認められた関係とは言い切れないのが実情です。
事実婚ということを告げると「なんで結婚しないの?」と聞かれたり、「夫婦なのに別姓なのはどうして?」と勘繰られることもあるかもしれません。

結婚する親世代の人から見るとまだそういった考えの人も多く、「一緒に住むなら籍を入れろ」という親もいます。
このように、周囲の理解を得にくかったり、要らぬ噂話や好奇の目で見られてしまうこともあるのです

デメリット⑥:日常生活の細かいことで不便に感じる

事実婚だと、日常生活で何かと不便なことが生じることがいろいろあります
家を借りる時に大家さんが難色を示したり、生命保険や住宅ローンを選ぶ際に条件が増えてしまうこともあります。

事実を知らない人にいちいち説明するのが大変だったり、微妙に気を使われることもあるかもしれません。
細かいところで何かと「面倒だなぁ」と感じる場面が出てくるでしょう。

事実婚に関する疑問 

事実婚とは子供が問題

事実婚とは、戸籍上は他人であるということはわかりましたが、実際に生活していく上で大きく影響することやわからないことがあるでしょう。
事実婚に関することでよく聞かれる以下の2つの疑問について、くわしく見ていきましょう。

住民票の記載の仕方は?

「同棲ではない、事実婚だ」ということを証明するためには、住民票を届け出ることが一つの方法です。
同棲などで一緒に住んでいていると、住民票には「同居人」として届け出ているかもしれません。

住民票は夫が世帯主の場合は女性のことを「妻(未届)」(逆の場合は「夫(未届)」)と記載できるので、パートナーが単なる同居人ではないことを証明することができます。
住民票の内容は、別々の家から一緒の家に引っ越しする際の転入届を提出するときや、世帯変更の届け出などで変更することができます。

事実婚夫婦の間の子供の扱いは?

再度の説明になりますが、事実婚のカップルの間に子供が生まれた場合は、母親の戸籍に入って母親の姓を名乗ることになります
父親がその子供を「認知」すれば届け出婚の父子のように、父親からの相続や扶養の権利を得ることができるようになります。

親権は届け出婚の場合は父母の共同親権ですが、事実婚では母親にあります。
もし事実婚関係が破たんしたら、子供を育てていくために必要なお金(養育費)を請求できなくなってしまう可能性もあるのです。

事実婚を周りに認識してもらいやすくなる方法 

事実婚とは結婚式を挙げる

届け出婚とは男女が法律的に夫婦関係にありますが、事実婚とは法的拘束力が届け出婚よりどうしても弱いと感じられてしまいます。
事実婚でも届け出婚とはほとんど変わらない夫婦関係にあるということを周りの人に認知してもらうための方法とは以下のものがあります。

方法①:結婚式を挙げる

届け出婚の夫婦でも結婚式を挙げない人もいますが、やはり結婚式をするということは「結婚した」ということを本人も、そして周りの人も実感することができます
招待する人も大勢いたり、その人たちの前で愛を誓うわけですから、中途半端な気持ちではないということもわかります。

また、結婚式とはお金もかかるので、それだけのお金や労力をかけて結婚式をやれば、二人が事実婚とはいえ一生添い遂げる相手であることの本気度が周りにも伝わりやすくなるのです。

方法②:事実婚の契約書を作成する

例えば会社で配偶者として福利厚生を受けたいときなど、書類的なもので対外的に二人の事実婚の関係を証明することが必要なら、「事実婚の契約書」を作成するという方法があります。
他にも、この契約書があれば、立場が不安定である事実婚の状態を少しでも安定させることが可能になります。

万が一不貞行為があったときの権利を守るために財産分与について決めておいたり、いつから事実婚関係にあったのかの意思表示を確認することができたり、相手の親族との関係を明確にすること(パートナーの親族の扶養義務がない)などができるようになります。

事実婚を解消したときの慰謝料・財産分与などの問題

事実婚解消とは慰謝料もらえる

事実婚の解消はお互いの意思のみですることができます。
もともと事実婚を始めるときも法的な手続きをしていないのですから、もちろん解消するのにも法的な手続きは必要ありません。

しかし、お互いの意思や認識に違いがある場合はトラブルが発生する可能性があり、そのトラブルを解消するための方法とは、届け出婚の場合と同じ方法をとるものと違った方法をとるものがあります。

どんな問題があって、それぞれ解決方法とはどのようなものがあるのか、くわしく見ていきましょう。

慰謝料

届け出婚のカップルが離婚したときと同じように、事実婚を解消しても慰謝料を請求することができます
たとえば不貞行為やDVがあったなどの破たん原因があれば、そのことを理由に慰謝料を請求できます。

また、正当な理由がないのに一方的に事実婚を解消すると言う場合も慰謝料の対象となります。

財産分与

事実婚を始めたときから解消したときまでの財産は、届け出婚の離婚と同じように請求することができます。
事実婚以前の財産は財産分与の対象にならないこと、事実婚を始めてから夫側のみの収入で貯蓄をしていても、妻側はその預金の半分を得る権利があることなども届け出婚の場合とは同じです。

年金分与

事実婚の解消による年金分与は認められているものの、届け出婚の離婚とは違って制限があります。
事実婚では、国民年金第3号被保険者だった期間に限って年金の分与が認められています。

この第3号被保険者とは、被扶養者であることの届出や申請が必要で、同一世帯で世帯主との続柄が「妻(未届)」(逆の場合は「夫(未届)」となっている住民票があれば証明できます。
2008年4月1日以降にパートナーが納めた厚生年金は、パートナーの合意がなくても2分の1の割合で分割することができます。

養育費

事実婚と届け出婚とで養育費の問題は違ってきます。
事実婚のカップルの間の子供は、父親が認知しない限りは法律上の親子にはなりません。

認知しない状態のまま事実婚を解消すると、父親と子供との間に扶養する義務は生じないので、養育費の請求はできなくなります
養育費の請求をするためには、父親であると認知して法律上の親子関係になる必要があるのです。

婚姻費用

婚姻費用は請求することができます。
一方が偏って婚姻費用の負担をしていれば、もう一方が分担請求が可能で、調停も行うことができます。

しかし、事実婚関係は継続中でも別居している場合は婚姻費用の請求は難しくなります。
事実婚とはあくまでも同居しているという実態があって始めて成立するので、別居しているということは事実婚関係は解消されているとみなされるからです。

海外の事実婚制度について 

事実婚と届け出婚のちがいとは

結婚に対する考え方や制度は国によってまったく違ってきます。
日本で言う事実婚のような付き合い方をしているカップルは、外国、特にヨーロッパでは日本よりもたくさんいます。

海外の事実婚の制度についてみていきましょう。

制度①:サムボ法(スウェーデン)

北欧の国々は、男女平等の意識が高く共働きが普通で、権利や給料などほとんど男女差がありません。
サムボ法(SAMBO)とは、事実婚を法律婚と同じように保護するスウェーデンの法律です。

法律婚の前にサムボ婚をするカップルも多く、スウェーデンで生まれる子どもは半数が非嫡出子とも言われています。
結婚前の同棲が社会的に認められており、もし別れてシングルマザーになっても、収入や国の手厚い福祉できちんと子供を育てられるので、あえて法律婚をする必要はないのです。

制度②:パックス(フランス)

フランスでは日本で言う事実婚のように、共同生活をして法律婚をしているのと同じように権利を得られる制度があります。
パックス(PACS)とは、その共同生活のための契約のことを言います。

フランスでは法律婚をするための手続きや条件がとても大変で、もし離婚すると多額の費用と年月がかかります。
そのため、法律婚よりも簡単にできるPACSを選ぶカップルが増えています。

また、フランス人の「そのとき一緒にいたい人といればいいんじゃない?」という恋愛や生き方に対しての柔軟な考え方が、この制度を支持する人の増加につながっているのでしょう。

事実婚と届け出婚の違いとは?その違いを知って、本当に事実婚を選んでもいいか考えてみよう!

事実婚とはわかって結婚式をする

結婚とは、婚姻届という紙一枚で夫婦になるというよく考えてみたら不思議な制度です。
その紙一枚がもたらすものは夫婦間においてとても重かったり、必要なものであると同時に場合によっては不必要に感じることもあるでしょう。

しかし日本ではいまだに結婚に対する考え方が固定されていて、事実婚を選ぶカップルはまだまだ少ないです。
事実婚と届け出婚の違いを知って、結婚の形はそのカップルによって違っていいものではないでしょうか。

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ライター
noel編集部

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