夫婦別姓のメリット・デメリット!法的立場や周囲に与える影響を解説
日本では男女が結婚したら、どちらかの一方の名字に改めなければならないと法律で定められています。 そのため、夫婦がそれぞれの名字を名乗る「夫婦別姓」の制度は認められていません。 しかし、最近では結婚後も自分の名字を名乗り続けたいということで、あえて事実婚を選択するカップルが増えています。 そこで今回は、夫婦別姓のメリットやデメリット、法的立場や周囲に与える影響について解説していきます。
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「夫婦別姓」とは?
旧姓の通称使用
これは、本来戸籍上での本名ではないものの、仕事などの社会的な活動の場では旧姓をそのまま名乗り続けるということです。
結婚後は妻が夫の名字に変更するのが一般的ですが、結婚後も仕事を続ける女性の場合、結婚して名字が変わることによって、取引先やお客様などの外部の人にも結婚後の名字を覚えてもらう必要があります。
しかし、それを十分に周知しないまま接する機会があると、結婚後の名字と旧姓が一致しないことで別人だと思われてしまう恐れもあるのです。
そのため、そういった仕事への影響を防ぐために、最近では旧姓の通称使用を認めている会社も増えてきているのです。
事実婚
これは、婚姻届を提出してないものの、法律婚の夫婦と同等に扱われる男女関係のことを指します。
法律婚の場合は夫婦別姓が認められていませんが、事実婚の場合は法律上の婚姻関係には該当しないので、夫婦別姓のままでいることができます。
なお、事実婚のメリットとしては夫婦別姓でいられることから姓を変更する必要がない、親族のしがらみに縛られにくい、「夫」や「妻」としての責任をそこまで感じることがない、別れても離婚の履歴が残らないといったことが挙げられます。
また、法律婚の夫婦と同じように、事実婚のカップルには同居や扶養、貞操の義務や、婚姻費用の負担、養育費を請求する権利、財産分与や慰謝料を請求する権利などの様々な義務や権利が発生することになっています。
選択的夫婦別氏
これは、夫婦が望むのであればそれぞれの名字を名乗ることを認めるという制度のことを指します。
現在の日本の民法では、夫婦は夫か妻のどちらかの名字に改めなければならないと定められており、日本では妻が夫の方に合わせる場合がほとんどです。
しかし、近年では女性の社会進出が進み、結婚後も今まで通り仕事を続ける女性が増えてきました。
これにより、結婚後することで仕事に支障をきたすという女性も増え、夫婦別姓の制度の導入を求める意見が多数寄せられているのが現状となっているのです。
諸外国での夫婦別姓事情
アメリカ
アメリカの場合は、州によって法律は異なるものの、1970年代から選択的夫婦別姓が認められたため、現在ではどの州でも夫婦別姓が認められています。
また、ハワイ州やルイジアナ州の場合は自分と相手の名字を合体させて名乗ることもできます。
イギリス
イギリスの場合は、名字に関する法律の規定はなく、事実を偽って他人に害を与える意図がない限りは名字を自由に変更することができます。
そのため、変更手続きを特に行わなければ、旧姓を名乗り続けることができます。
ただ、イギリスでは日本と同じように妻が夫の名字を名乗るのが一般的です。
フランス
フランスの場合は、イギリスと同じように法律の規定はなく、夫婦で同じ名字を名乗ることも、それぞれの名字を名乗ることも、自分と相手の名字をくっつけて名乗ることも認められています。
なお、夫婦別姓の場合、子供は両親のどちらか一方を選択することになります。
中国
中国の場合は、1950年に自分の名字を使用する権利が認められたため、現在では夫婦別姓が認められています。
また、日本と同じように夫婦で同じ名字を名乗ることもできますし、アメリカのハワイ州やルイジアナ州と同じように自分と相手の名字をくっつけて名乗ることもできます。
なお、子供の名字は両親のどちらか一方を選択することになりますが、父親の方を名乗るのが一般的です。
韓国
韓国の場合は、夫婦別姓が一般的で、夫婦で同じ名字を名乗ることは基本的にありません。
これは、韓国は儒教を信仰しており、韓国人にとって名字というのは自分の血の名前であるという認識を持っていることから、結婚しても血の交わることのない夫婦は別々に名乗るのが当たり前なのです。
なお、子供は父親の方を名乗るのが一般的でしたが、2005年に法改正されたことにより、婚姻届けを提出する時に協議した場合は、子供は母親の方も名乗れるようになりました。
夫婦別姓の法的立場
では、夫婦別姓の法的立場をみていきましょう。
- 民法第750条
- 戸籍法第6条
- 戸籍法第74条
続いて、夫婦別姓の法的立場を、それぞれ詳しくみていきます。
法的立場① 民法第750条
まず、民法第750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定められています。
つまり、婚姻届を提出して法律的に夫婦であると認められたいのであれば、夫婦は必ずどちらかに合わせる必要があります。
そのため、民法第750条に違反していることになるのです。
法的立場② 戸籍法第6条
次に、戸籍法第6条では、「戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。」と定められています。
つまり、法律婚をすると夫婦は一緒に新しい戸籍に入り、なおかつ同じ戸籍の中ではひとつの名字しか名乗れないことを意味しています。
そのため、戸籍法第6条にも違反していることになるのです。
法的立場③ 戸籍法第74条
最後に、戸籍法第74条では、「婚姻をしようとする者は、夫婦が称する氏を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。」と定められています。
つまり、婚姻届を提出する前に夫と妻のどちらの名字を名乗るのか決め、結婚後に名乗る名字を記載した上で婚姻届を提出しないと、法律婚ができないということを意味しています。
そのため、戸籍法第74条にも違反していることになるのです。
夫婦別姓にするメリット
では、夫婦別姓にするメリットをみていきましょう。
- 変更の手続きをする必要がなくなる
- 個人の一貫性を保つことができる
- 旧姓を名乗り続けることができる
- 個人情報を守ることができる
- 両家の家名に囚われずに済む
- 公平感がある
続いて、夫婦別姓にするメリットを、それぞれ詳しくみていきます。
メリット① 変更の手続きをする必要がなくなる
1つ目のメリットとして、変更の手続きをする必要がなくなるというものがあります。
結婚して姓が変われば、住民票をはじめ、運転免許証や健康保険証、クレジットカード、銀行口座などに登録されている姓を変更する手続きを取らなくてはなりません。
これらの手続きは、特に仕事や育児で忙しく過ごしている人からすれば非常に面倒な作業です。
また、妻が夫の姓を名乗るのが一般的なので、女性だけが多くの負担を強いられることになるのが現状です。
しかし、夫婦別姓にすることで、変更の手続きを取る必要がなくなり、手続きにかかる時間や手間を省くことができるというメリットがあるのです。
メリット② 個人の一貫性を保つことができる
2つ目のメリットとして、個人の一貫性を保つことができるというものもあります。
例えば、研究者の場合は今まで作成、発表してきた論文などの姓を変更する必要性が出てきます。
そうなると、旧姓でその名が知られている研究者の場合、周りの人から同じ人だと思われなくなり、個人の一貫性を保つことができなくなる恐れがあるのです。
また、一般企業で働いている女性の場合も、きちんと姓が変わったことを職場の人に周知させたおかないと、書類の作成者やサインが同じ人だと思われなくなってしまうかもしれません。
そうなると、誰が書類を作成したのか、サインをしたのか混乱してしまうことによって、後々トラブルに発展する可能性も十分にあるのです。
そのため、夫婦別姓にすることで個人の一貫性を保ち、仕事に悪影響を及ぼさないで済むので、仕事をしている女性からするとこれは大きなメリットになるのです。
メリット③ 旧姓を名乗り続けることができる
3つ目のメリットとして、旧姓を名乗り続けることができるというものもあります。
女性の中には、この世に生まれてきてから結婚するまで、旧姓を名乗って生活してきたため、結婚して新しい姓を名乗ることに違和感を持つ人もいます。
姓というのは自分の家系や家族との繋がりを表すものでもあるので、このまま旧姓を名乗り続けたいと思う人も少なくないのです。
メリット④ 個人情報を守ることができる
4つ目のメリットとして、個人情報を守ることができるというものもあります。
姓が変わることによって必然的に結婚したことが周りの人に知られることになります。
女性の中には、結婚していることを知られることでプライバシーの侵害だと感じる人や、結婚していることを知られなくない何かしらの事情を抱ええている人も少なからずいます。
そのため、こういった人からしてみれば、夫婦別姓にすることによって結婚していることを周りの人に隠しておくことができます。
また、相手と別れることになったとしても、姓が変わることはありません。
法律婚の場合だと、離婚したことで周りの人に気を使われているなと感じることがありますが、夫婦別姓の場合はそういった気遣いをされる心配もありません。
メリット⑤ 両家の家名に囚われずに済む
5つ目のメリットとして、両家の家名に囚われずに済むというものもあります。
結婚して夫の姓を名乗るようになると、嫁ぎ先の家の人間になったような感覚になりますが、夫婦別姓の場合は、2人が自分の家の名をそれぞれ背負うことになります。
また、少子化社会ということもあって、最近では一人っ子の人も少なくありません。
そのため、自分が生きている間に実家が途絶えることになるといった心配もなくなります。
メリット⑥ 公平感がある
6つ目のメリットとして、公平感があるというものもあります。
一昔前までは、「男性は外に出て働き、女性は家を守る」という価値観が根強かったため、女性よりも男性の社会的立場の方が圧倒的に強かったものです。
しかし、最近では男女平等が叫ばれるようになり、女性の社会的立場も強くなってきています。
そのため、妻が夫の姓を名乗るのが一般的ですが、女性の中には夫の姓を名乗ることに不公平感を抱く人も少なからずいます。
こういった女性からしてみれば、こうすることで不公平感がなくなるので、これもひとつのメリットとなると言えるのです。
夫婦別姓にするデメリット
では、夫婦別姓にするデメリットをみていきましょう。
- 法律上では結婚が認められない
- 子供の姓が父親の姓と違う
- 子供の姓に選ばれなかった方の親族に違和感を与える
- 周囲の目が気になってしまう
- 夫が亡くなった場合は遺産を相続できない
- 家族としての一体感がなくなる
続いて、夫婦別姓にするデメリットを、それぞれ詳しくみていきます。
デメリット① 法律上では結婚が認められない
1つ目のデメリットとして、法律上では結婚が認められないというものがあります。
現在の民法では、夫婦は夫か妻のどちらかの姓に改めなければならないと定められています。
つまり、夫婦別姓を選択するということは、法律上では結婚が認められないということを意味し、婚姻届を提出せずに事実婚の状態でなければ、旧姓を使い続けることはできないのです。
そのため、相続税の控除や所得税の配偶者控除、医療費控除などの様々な公的サービスを受けることができなくなります。
また、戸籍上では婚姻の履歴が残らず、独身と同じ扱いになります。
事実婚の場合でも法律婚の夫婦と同じような保障を受けることができますが、その時には事実婚であることをきちんと証明する必要があるので、法律婚と比べて手続きが非常に面倒であるというデメリットもあります。
デメリット② 子供の姓が父親の姓と違う
2つ目のデメリットとして、子供の姓が父親の姓と違うというものもあります。
この場合、子供は非嫡出子扱いになり、母親の戸籍に入ることになるので、2人の間に生まれた子供は母親の姓を名乗ることになります。
ということは、子供の姓と父親の姓が違うということになるので、周りの人からも子供がいるのになぜ子供と父親の姓が違うのかと世間から冷ややかな目で見られてしまう可能性も十分にあります。
デメリット③ 子供の姓に選ばれなかった方の親族に違和感を与える
3つ目のデメリットとして、子供の姓に選ばれなかった方の親族に違和感を与えるというものもあります。
事実婚の場合は、男性が子供を認知しない限り、子供は女性の姓を名乗ることになります。
しかし、男性が子供を認知して、家庭裁判所に姓の変更許可申し立てを行い、許可が下りれば子供は男性の方の姓を名乗れるようになります。
ただ、どちらの姓を名乗るにしても、どちらかの親との姓と子供の姓が異なるのは変わりありません。
そのため、夫婦間で納得していたとしても、子供の姓に選ばれなかった方の親族が違和感を覚えてしまうことは容易に想像がつきます。
デメリット④ 周囲の目が気になってしまう
4つ目のデメリットとして、周囲の目が気になってしまうというものもあります。
近年では、事実婚のカップルが増えてきてはいるものの、日本では事実婚に馴染みのない人が多いのが現状です。
そのため、事実婚のカップルに対して、周りの人から「どうして結婚しないのか」、「結婚できない理由があるのか」といった批判的な意見を言われることもあります。
また、2人の間に子供がいる場合、子供の姓と一方の親の姓が違うことによって、周りの人から批判的な意見を言われてしまうこともあります。
そして、ある程度子供が大きくなってくれば、子供から「なぜお父さんとお母さんの姓が違うのか」と疑問に思われてしまうかもしれません。
デメリット⑤ 夫が亡くなった場合は遺産を相続できない
5つ目のデメリットとして、夫が亡くなった場合は遺産を相続できないというものもあります。
夫婦別姓を選択するためには、婚姻届を提出せずに事実婚の状態を続けていかなければなりません。
そのため、事実婚の状態で夫が亡くなってしまった場合、妻は法定相続人になることができないので、夫の遺産を相続することができなくなります。
2人の間に子供がいて父親が子供を認知しているのであれば、子供が法定相続人になります。
しかし、2人の間に子供がいない場合は、夫の親や兄弟姉妹が法定相続人になります。
そのため、事実婚の状態で夫の遺産を相続するためには、夫が亡くなる前に公証役場で公的な遺言書を作成しておく必要があります。
ただ、公的な遺言書を作成してあっても、法定相続人から遺留分を請求される可能性もあるので注意が必要です。
デメリット⑥ 家族としての一体感がなくなる
6つ目のデメリットとして、家族としての一体感がなくなるというものもあります。
事実婚の場合は、同じ世帯に2つの姓が存在することになるので、家族が全員同じ姓であるという一体感が薄れてしまう可能性があります。
また、事実婚の場合は別れることになっても姓を変更する必要はありませんし、戸籍に婚姻履歴が残ることもないので、離婚に踏み切りやすくなって家族がバラバラになってしまう恐れもあります。
夫婦別姓が周囲に与える影響
家族や親へ与える影響
夫婦別姓が家族や親へ与える影響としては、家族が全員同じ姓ではないことで、家族の一体感が弱まるというものがあります。
日本では、法律で夫婦同姓が定められていることもあり、夫婦は同じ姓を名乗るのが当たり前という価値観を持っている人がほとんどです。
実際には姓が違うだけで家族の一体感が損なわれることはないと思われますが、そのように感じてしまう人も少なからずいるのです。
実際に内閣府が行った世論調査によると、41.6%の約半数の人が夫婦別姓でいることによって家族の一体感が弱まると答えています。
子供への影響
夫婦別姓が子供に与える影響としては、同級生からいじめを受けたり、親との姓が違うことに子供が周りの人が違和感を覚えるということが挙げられるでしょう。
日本では、親と子供の姓は同じなのが当たり前ですし、結婚していないカップルの間に子供できたとしても、子供ができたことをきっかけにして結婚するのが当たり前だと考えている人も多いです。
そのため、子供の姓が親の姓と違うと、「訳アリの家庭なのでは?」、「父親と子供は血が繋がっていないのでは?」と冷ややかな目で見られてしまうのは仕方のないことかもしれません。
夫婦別姓のメリット・デメリットをよく考えて選択しよう!
現在、日本では夫婦別姓が認められていないので、夫婦別姓を選択するのであれば結婚を諦めるしか方法はありません。
ただ、事実婚が認められれば、法律婚の夫婦と同じような扱いを受けられながらも夫婦別姓を実現することができます。
夫婦別姓になることで、姓を変更する必要がない、両家の家名に囚われずに済む、公平感が保てるなどのメリットがあります。
一方で、法律上では夫婦として認められないので、法律婚の夫婦が受けられる公的サービスを受けられないなどのデメリットがあります。
また、2人の間に子供がいる場合は、片方の親と子供の姓が違うということで、周りの人から冷ややかな目で見られたり、手続きがややこしくなってしまったりと、子供にも悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、夫婦別姓を選択する時には、これらのメリットやデメリットをよく考えておかなければならないのです。
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