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山梨の方言(甲州弁)の特徴・種類

山梨の方言(甲州弁)と富士山

山梨の方言(甲州弁)の特徴

山梨の方言(甲州弁)を初めて聞いた人は、「なんて荒っぽい言葉使いなんだろう」とビックリしてしまうかもしれません。それも語尾が「じゃん」「ずら」「しちょし」「しろし」など、寸止まりで、しかも強いのです。

そのため、なんだか怒られているような気持になってしまうかもしれません。しかも、このような強い口調は女性も一緒なので、甲州の女性は気が強いと思われています。

しかし、実際の山梨の方言(甲州弁)を聞いてみると、同じ「じゃん」でも「じゃんね〰」とか「じゃんけね〰」など、かなり柔らかな言い回しもされていて、優しさや親しみやすさが感じられます。

山梨の方言(甲州弁)の種類

山梨県は、昔から幕府の直轄地で、お殿様も徳川家から選出されていました。いわゆる「藩」ではなく、幕府直轄の地だったという歴史があります。それなのに、山梨の方言(甲州弁)は非常に「個性的」です。

これには、地形が深く関係しています。山で囲まれた山梨県は、人の往来もそう簡単にできるものではありませんでした。そのため、閉ざされた環境の中で独自の山梨の方言(甲州弁)が発達したといわれています。

山梨県は、大菩薩峠と御坂峠という急峻な峠があり、それが昔から言語の壁となっていました。山梨の方言(甲州弁)は、大きく分けて2種類あります。

甲府盆地を中心とした「国中(くになか)地方」と都留、大月、富士山周辺の「郡内(ぐんない)地方」に分かれています。地理的に国中は、長野・静岡への交流が、そして郡内は、東京三多摩・千葉・埼玉・群馬との交流が盛んでしたから、おのずとそれらの地域の方言の影響を受けています。

そのため、同じ山梨県内でも国中と郡内では、方言が理解できないというケースも多々あります。

山梨の方言(甲州弁)のよく使われる定番表現

山梨の方言(甲州弁)でおしゃべり

①:「とんでけし」

山梨の方言(甲州弁)では「飛ぶ」といって「走る」という意味になります。「早くとんできし!」というのは「はやく走っていきなよ」という意味になります。

標準語でも「飛び出すな」という言葉があり、わからなくはないのですが、山梨の方言(甲州弁)でいきなり「とんでけ!」といわれると、思わず「飛べねーよ」と返したくなります。

②:「かじくる」

「かじる」というのは、山梨の方言(甲州弁)では「掻く」という意味です。とくに「かじくる」を多用します。「そんなにかじくると、血が出るよ」というのは、「そんなに掻いてしまうと血が出るよ」という意味です。

ではリンゴをかじるというのは、標準語の「齧る」を使います。山梨の人は、その場の状況によって使い分けているのです。

③:「気をつけろしね」

ちょっとくだけた感じで「気をつけてね」という意味です。最近、山梨の交通量の多い道路で、この言葉を使った標語が話題になりました。

県外から来た観光客の人たちが「気をつけろ!死ね」と受け取ってしまったというのです。また「ライトをつけろしね」とか「スピードを落とせしね」とか、山梨の方言(甲州弁)は「なんと過激な!」と思われたとか。

山梨の方言(甲州弁)では「〰しね」は「〰してね」という「〰しなさい」よりは、ちょっと柔らかな表現なのです。

④:「いくじ?」

これは山梨の方言(甲州弁)で「何時ですか?」という意味です。「今、いくじで?」「いくじに待ち合わせ?」などなど、漢字にすると「幾時」ということになるのでしょうか。

いきなり言われると「育児?」と考えてしまいますが、そのあたりはその時の雰囲気をつかむしかありません。

⑤:「からかう」

「あの案件どうなってるの?」と聞かれたときに「あれね、からかっているんだけど、なかなか進まなくて」といったときに山梨の方言(甲州弁)で使う言葉です。普通は「からかう」というのはふざけているという意味でとらえられますが、山梨の方言(甲州弁)では、逆に真剣に取り組んでいることを意味しています。

ですから仕事や頼み事で進捗状態を聞いたとき「からかっている」と山梨の方言(甲州弁)で返事をされたら、試行錯誤して頑張っているという意味ですから「ふざけている」と思わないでください。

⑥:「ほーけぇ」

山梨の方言(甲州弁)で頻繁に出てくるのが「ほーけぇ」です。標準語では「そうなの」「そうなんだ」というという意味になります。ただし、「ほーけぇ」には、相手の言葉に対して、ちょっとだけ敬意や驚きといったニュアンスも含まれており、標準語よりも、より人間的な気持ちが含まれています。

コミュニケーションを大切にしてきた山梨県だからこそ、この「ほーけぇ」には、温もりや相手を尊重する気持ちが含まれています。

⑦:「しちょし」

山梨の方言(甲州弁)で、最も難しいのがこの「しちょし」「ちょし」です。「甲州十ちょ」というものも存在するほどです。

一は、いっちょ(行くな)  
二は、にちょ(煮るな)) 
三は、みちょ(見るな)   
四は、しちょ(やるな) 
五は、ごっちょしちょ(面倒するな)   
六は、むいちょ(向くな)   
七は、ないちょ(なくな) 
八は、やっちょ(やるな)  
九は、くっちょ(食べるな)  
十は、とっちょ(取るな)

このように「ちょし」や「ちょ」には、禁止の意味があります。でも「〰するな!」といわれるよりも、ちょっと柔らかく聞こえませんか?
      

⑧:「おまん」

いきなり「おまん」などといわれると「ドキッ」としてしまいますね。女性なら「おいおい、それってセクハラじゃない」と思われてしまいそうです。

山梨の方言(甲州弁)では「おまん」は「あなた」という意味です。あなたよりも、より親近感や好意も含まれていて、気が置けない人などに使う言葉です。

むしろ山梨の方言(甲州弁)で「おまん」と呼ばれたら、自分のことを認められたと思っていいでしょう。

⑨:「ぼこ」

「ぼこ」は標準語で「子供」のことです。「このぼこは!いつまでも寝てるで!」「このぼこは、いいぼこでね」などなど、お年寄りはけっこう使います。

自分の子供に対して「ぼこ」と言われると、なんだか「ぽんこつ」みたいに感じる人もいるようですが、まったく他意はありません。また、ぼこというニュアンスには、単に子供というよりも、もっと親近感のある「こいつは」とか「この子は」という意味も含まれています。

⑩:「てっ」

山梨の方言(甲州弁)で、びっくりするときの感嘆符のようなものです。相手の言葉に対するリアクションとして、「てっ」から始まることで、相手に自分が驚いていること、あるいは興味があることを示します。

たとえば「ほーけー」よりも「てっ、ほーけー」のほうが、相手の話により興味を示しているという感じになります。

⑪:「えらい」

標準語では「えらい=偉い」ということになりますが、山梨の方言(甲州弁)では「疲れている」や「大変だ」という意味になります。もちろん「偉い」という意味での使い分けもされています。

「今日は一日えらい日だった」は「今日は一日大変な日だった」という意味です。「えらい、えらい」は「疲れた、疲れた」という意味になります。

⑫:「つーこんずら」

標準語では「そういうことでしょ」という意味になります。「つー」がその前の会話全般のことを示し、疑問・同意を求めるときに使われる言葉です。

「ずら」の語尾を上げると、優しく聞こえますし、下げると断定的でちょっとケンカ腰に聞こえます。

⑬:「ちゃくい」

標準語にすると「ずるい」という意味があります。山梨の方言(甲州弁)では、「おまん、ずいぶんちゃくいこんしてくれただな」(あんた、ずいぶんとずるいことしてくれたじゃない)という使い方をします。

また「あいつはちゃくい男だ」という場合は、「ずるい」というニュアンスとともに軽蔑の気持ちがかなり入っていて、山梨ではちゃくい男は、ハブられます。

⑭:「しわい」

標準語に直すと「ケチくさい」「生意気だ」という意味があります。お金に細かかったり、うるさかったりすると「あいつはしわいなあ」といった使い方をします。

一方、生意気だということを表現するのにも、けっこうつかいます。生意気なことをしていると先輩から「しわい」と言われます。いまでいう「うざい」に似たニュアンスです。

山梨の方言(甲州弁)の告白フレーズ・かわいい表現

山梨の方言(甲州弁)で語り合う恋人たち

①:「ほのいちらな おまんがでー好きずら」

「そのまんまのあなたが大好きです」という意味です。語尾が「じゃん」になることもありますが「ずら」の方が断定的で、強い意思を表しています。「好きじゃん」はどちらかというと「好きなんだよね〰」みたいな感じです。

ですから、山梨の方言(甲州弁)での思い切った告白には「ずら」を使い、ちょっとほのめかしたい場合は「じゃん」を使います。

②:「いつも私の隣にいてくりょうし」

「いつも私の隣にいてください」という意味になります。「くりょう」というのは、「ください」という意味で、なにか相手にしてもらいたいときに使う山梨の方言(甲州弁)です。

「くりょう」は、響きも柔らかくて、女性が使うとかわいらしいイメージです。「くりょう」だけで終わる場合もありますが、「し」を語尾につけることで、ここに強い意志を加えることになります。「絶対、離れないでね」といった意味が含まれます。

③:「おめっさら抱いてくりょうし」

「おもいっきり抱いてください」という意味です。「おめっさら」は山梨の方言(甲州弁)では「おもいっきり」という意味で、「おめっさらぶつけた」とか「おめっさら叱られた」といった使い方をします。

「くりょうし」は強い願望を表す言葉になりますから、女性からの情熱的な愛の告白になります。

④:「ちっとっつ」

「ちょっとずつ」という意味です。「ちっとっつ食べようね」とか「ちっとっつ分けっこしようね」といった場合に使う山梨の方言(甲州弁)です。

とくに女の子が使うと、かわいいイントネーションになります。ちょっと気になる女の子にこの言葉を言われたら、男性もキュンキュンしてしまうのではないでしょうか。

④:「やっこい」

「やわらかい」という意味です。山梨県人の間では、ごく普通に使われているため標準語だと信じ切っている人も多いのだとか。

「このお肉やっこいね」とか「だんだんやっこくなってきたよ」といった使い方をします。イントネーションも柔らかく、女性らしい優しさのこもった山梨の方言(甲州弁)といっていいでしょう。

⑤:「しよ〰」

「そろそろ起きたらどうなの」という言葉を山梨の方言(甲州弁)に置き換えると「そろそろ起きろしよ〰」という言葉になります。特徴は、最後の「しよ〰」の部分が伸びて、ちょっぴり甘えた感じに聞こえます。

何か男性にしてもらいたいときに使うと、なかなか断り切れない状況になります。

山梨の方言(甲州弁)の面白い表現

山梨の方言(甲州弁)にびっくりする女性

①:「だっちもねぇこん いっちょうし」

これを標準語に直すと「くだらないこと言ってんじゃないわよ」ということになります。「だっちもねぇ」というのには「くだらない」「つまらない」という意味があり、山梨県人は、いろいろなところでこの甲州弁を使います。

たとえば「だっちもねぇこんばっかやってんじゃねぇよ」は「くだらないことばかりやってるんじゃない」という意味。「だっちもねぇ人ばっかだね」は「くだらない人間ばかりだ」という意味です。

②:「わにわにしちょし」

なんとなくかわいらしい山梨の方言(甲州弁)です。標準語に直すと「ふざけないでよ」とが「調子に乗ってるんじゃないわよ」いう意味になります。

彼氏とけんかになっても「ふざけないで!」と叫ぶより「わにわにしちょ!」と言った方が、険悪にならないかもしれませんね。

③:「おちんぶりかいちょし」

いきなり言われたら、「セクハラか?」と思ってしまいそうな山梨の方言(甲州弁)です。標準語に直すと「いいかげん、すねていないでさぁ」という意味になります。

山梨の方言(甲州弁)のなかでも、とくにわかりにくく、誤解を招いてしまいそうな言葉です。

④:「ささらほうさら」

ささらほうさらは、会話の前後の流れから、いろいろな意味に使われる便利な山梨の方言(甲州弁)です。意味としては「しっちゃかめっちゃか」「どうにもこうにもならない」「まったく意味がわからない」「踏んだり蹴ったり」「てんやわんや」など、ちょっと混乱気味のことを表現します。

たとえば、延長コードが絡まって、なかなかほどけないときなど「これは、ささらほうさらでどうしようもないじゃん」といいます。「道は渋滞するし、雨は降ってくるし、ささらほうさらだったずら」などという言い回しをします。

⑤:「ちょびちょび」

なんとなくかわいらしい表現ですが、標準語に直すと「生意気」「いい気になっている」という意味になります。けっこう若い山梨県人も使っています。

使い方としては「ちょびちょびしてんじゃねーぞ」(いい気になっているんじゃねーぞ)とか「あいつちょびちょびしてる」(あいつ生意気だ)などです。

山梨県人にこの山梨の方言(甲州弁)を言われたら、ちょっと気に障ることを言ったか、やらかしているのかもしれません。いずれにしても相手は怒っています。

山梨の方言(甲州弁)を話す芸能人やドラマ・映画

山梨の方言(甲州弁)とドラマのワンシーン

山梨の方言(甲州弁)を全国区にしたのは、なんといっても、2014年に放映された朝の連続ドラマ「花子とアン」でしょう。ドラマは、東京と山梨が舞台になっていましたが、特に花子が幼少のときの山梨の方言(甲州弁)での会話は、印象深いものでした。

「こぴっとしろし」「くりょう」「ありがたいこんでごいす」「てっ」「じゃんね」など、どことなく可愛らしく、新鮮に思った人も多かったようです。

先生役を演じたお笑い芸人「マキタスポーツ」さんは、山梨県出身ですから、出演者の中でも、ひときわ自然な山梨の方言(甲州弁)でした。

山梨の方言(甲州弁)で自分の好きという気持ちを素直に伝えて

山梨の方言(甲州弁)で告白する女性

山梨の方言(甲州弁)は、「ブサイク方言ワースト1」などと言われますが、裏を返せば、言葉を飾らずに、気持をストレートに表現した方言だといえます。回りくどいことや思わせぶりの言葉ではなく、正直に気持ちを伝えるのに山梨の方言(甲州弁)は、最強と言えます。

ちょっと変わった言い回しもありますが、山梨の方言(甲州弁)を理解してしまえば、言葉の奥に潜んでいる親近感や思いやりの気持ちが、あとになってじっくりと心に沁み込んでくるのが山梨の方言(甲州弁)のいいところです。

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ライター
noel編集部

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